Breaking Down Nations!


Italy|イタリア


Identity|アイデンティティ

 

 地中海の中央、南欧と西欧にまたがって位置するイタリアは、フランス、スイス、オーストリア、スロベニア、ヴァチカン市国、サンマリノと国境を共有しています。また、スイス国土内にカンピオーネという他国内領土区域を有しています。六千万人の人口規模はEU内第三位で、地理的な特性上、イタリック系、エトルリア系、ケルト系、ギリシャ系を初め、古来、数えきれないほど多くの民族と文化が共存してきました。

 

 紀元前8世紀にラテン民族がローマ帝国を築き、やがて議会政府による共和制に移行し、イタリア半島を統一するばかりか、ヨーロッパの一部や北アフリカ、アジア等の地域へと覇権を拡大。紀元前1世紀には、地中海湾岸を支配し、文化・政治・宗教の中心地となり、法と技術が整備され、経済が発展し、芸術と文学が花開く、二百年以上続いたパクス・ロマーナの時代へと入ります。その後、凋落の時代を経験しますが、11世紀までには貿易や通商、金融等が発展し、近代資本主義の中心地となります。イタリアの地で起こったルネッサンスは、ヒューマニズム、科学、探検、芸術への新しい興味関心をヨーロッパ全土にもたらします。しかし、地域の勢力争いや他のヨーロッパ列強の侵略などにより、イタリアの国力は徐々に低下します。

 

 19世紀半ばのナショナリズム台頭により、独立戦争を経て1861年にはイタリア全領土がほぼ統一され、イタリア王国が成立します。貧しく工業化から取り残された南イタリアに対し、北イタリアは急速な工業化を遂げ植民地を拡大、1880年代から1920年代にかけて大量のイタリア人が国外に離散します。第一次世界大戦では戦勝国連合側であったにも関わらず、経済危機と社会混乱期に入ったイタリアは1922年にファシズムが台頭、ムッソリーニによる独裁政治が始まり、第二次世界大戦ではナチス・ドイツ、日本の枢軸国側に組して参戦。ナチスとファシズムへの抵抗運動の高まりを受け、イタリア市民戦争を経て、第二次世界大戦の敗戦と独裁制の廃止、民主的な共和制への移行へとつながります。経済発展を遂げ、世界10位、ヨーロッパ第三位のGDPを誇る主要先進国へと駆け上がりました。

 

 文化大国と呼ばれるイタリアは、芸術、音楽、文学、ファッション、ツーリズム、食文化、スポーツなどの領域で世界に多大なる影響を与え続けており、世界最多58もの世界遺産を保有し、旅行客の多さは世界第五位という人気を誇ります。

 

National Anthem|国歌

National Flower|国花

White lily / 白ゆり
White lily / 白ゆり

Regions|地域

Lombardy|ロンバルディア州

 北にスイス、西にピエモンテ、東にトレンティーノ・アルト・アディジョ、ヴェネト、南にエミリア・ロマーニャと接しています。北部の大都市ミランを擁し、商業・工業の中心地として、イタリア全土の1/6に当たる1,000万人の人口を抱えます。北側にはアルプス山脈がそびえ、南側にはピエモンテからイタリア半島最長のポー川がアドレア海まで伸びています。

 


Trentino-Alto Adige|トレンティーノ・アルト・アディジョ州

 北にオーストリア(一部スイス)との国境を有し、西にロンバルディア、東にヴェネトと面しています。第一次世界大戦前はオーストリア=ハンガリー帝国の領土であったため、ドイツ語を母語とするドイツ系住民が多いのも特徴です。

 


Veneto|ヴェネト州

 イタリア北東部の州で、北西にトレンティーノ・アルト・アディジョ、北にオーストリアとの国境、北東にフリウリ・ヴェネチア・ジューリア、東にアドレア海、南西にロンバルディア、南にエミリア・ロマーニャと接しています。州都はほかに類を見ないラグーナ(潟)の景観で有名なヴェネツィア、古代ローマ時代の円形競技場跡をはじめ中世の街並みがよく残り、ロミオとジュリエットの舞台にもなったヴェローナなどのコムーネ(自治体)があります。

 


Friuli-Venezia Giulia|フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州

 イタリアにある五つの自治州の一つで、北にオーストリア、東にスロベニアとの国境を有し、南にアドレア海、西にヴェネトと州を接しています。州都はアドレア海のとても浅い湾に面したトリエステ。州名に含まれているヴェネツィアは、同州には存在しません。中央ヨーロッパの国々にとっては、南欧の東西海上輸送ルートのハブとしても機能しています。

 


Valle D'aosta|ヴァッレ・ダオスタ州

 北にスイス、西にフランスと国境を接し、東南にピエモンテと州境を有する特別自治州で、公用語はイタリア語とフランス語。アルプス山中に位置するイタリア最小の州で、北にモンブランやマッターホルン、モンテ・ローザなどの高峰が連なり、チーズの生産で有名です。特にフォンティーナはイタリアのチーズフォンデュや様々なレシピに使われます。州都はアオスタ。

 


Piemonte|ピエモンテ州

 ピエモンテ=山麓、という意味が示唆する通り、北西にヴァッレ・ダオスタ州、北東にスイス、西にフランスと接し、東にロンバルディア、東南にエミリア・ロマーニャ、南にリグリアと州境を有する山麓地帯です。州都はイタリア第四の都市にして、イタリア北西部ではミラノに次ぐ人口を擁するトリノ。1861年にイタリア王国が建国された際には、トリノが短期間王国の首都となった時期もあります。のちにフィレンツェ、ローマに移転したものの、このような歴史的経緯からイタリア王国の王太子は「ピエモンテ公」の称号を名乗っていました。

 


Liguria|リグーリア州

 リグリア海に面し、東西に長細いブーメラン形の州で、西はフランス、北にピエモンテ、北東にエミリア・ロマーニャ、東にトスカーニャと接しています。イタリアの代表的なバジルソース「ペスト」発祥の地です。州都はジェノア。

 


Emilia-Romagna|エミリア・ロマーニャ州

 北にロンバルディア、ヴェネト、東にアドリア海、南にマルケ、西南にとスカーニャ、西にピエモンテ、リグーリアと接しています。ヨーロッパでもっとも裕福で先進的な地域のひとつで、世界で最古のボローニャ大学があるほか、ロマネスクやルネッサンスの都市を擁し、フェラーリ、ランボルギーニ、マゼラッティ、デュカティ、パガーニ等の自動車会社の本拠地が集積しています。首都は一時期サッカー選手の中田英寿がレンタル移籍でプレーしていたボローニャ。

 


Tuscany|トスカーナ州

 州都フローレンス、ピサの二大都市を有するイタリア中北部の州。北にリグリア、エミリア・ロマーニャ、東にマルケ、ウンブリア、南にラツィオと州境を有し、西側にはティレニア海との広大な海岸線が続きます。イタリア語とルネッサンスの発祥の地であるトスカーナは、芸術や文学、哲学等のハイカルチャー発信地としてイタリア全土に影響を与えており、キャンティ等のワイン生産地としても有名です。首位のヴェネトに続き、旅行客に大変人気のあるエリアでもあります。

 


Umbria|ウンブリア州

 海に囲まれた細長いイタリア半島は、北部の大陸側を除くとほぼすべての州が海に面していますが、中部の州で唯一海岸線がない州がウンブリア。北西のトスカーニャ、北東のマルケ、南のラツィオに囲まれた内陸の三角形地帯で、丘陵や山岳地帯、谷と平野が広がります。1160年から毎年5月15日に開催されるチェーリの祭り(巨大なキャンドルを神輿のように担いで観客の間を通って山を駆け上がる)や、毎年7月にペルージャで開催されるウンブリア・ジャズ・フェスティバルが有名。首都は中田英寿が初めて所属したセリアAのチームでも知られるペルージャ。

 


 北西にトスカーニャ、北にエミリア・ロマーニャ、東にアドレア海、南にアブルッツォ、西にウンブリアと面しています。丘陵地帯が広がり、海岸線沿いには19世紀に建設された鉄道が走りますが、内陸部は山岳地帯で交通の便は良くありません。主要都市のひとつであるウルビーノは、建築家ラファエル誕生の地でもあり、ルネッサンスの歴史の中心地のひとつでもあります。

 


Lazio|ラツィオ州

 イタリア最大の都市にして首都でもあるローマを州都とする中南部の州で、五百万人を超えるイタリア第二位の人口を抱え、北にトスカーニャ、ウンブリア、東にアブルッツォ、南にカンパーニャと接しています。小さな山々が東と南にある以外にはほとんどが平野で、農業、工芸、畜産、漁業等が伝統的な主要産業。また人口の73%がサービス業に従事しており、工業の比率が非常に低いのが特徴です。キウイやペコリーノ・ロマーノや水牛モッツァレラなどのチーズの生産で有名です。

 


 西にラツィオ、北にマルケ、南にモリーゼと州境を有し、東側はアドレア海に面する南部の州。西側にアペニン山塊を含む山岳地帯が広がり、東側には湾岸エリアが広がります。州の半分近くが国立公園や天然資源として保護されており、ヨーロッパで最も緑が多い地域とされています。そのため、希少種も多く、ヨーロッパに生息する動物種の75%が生息しています。また、ヨーロッパ最南端に位置する氷河のひとつ、カルドロン氷河があることでも知られます。位置的にはイタリア中部にも属すものの、文化や言語、歴史、経済的な意味では南部に属すると考えられています。19世紀のイタリア人ジャーナリスト、プリモ・レビが地域の風土と人々を「forte e gentile=強くて親切」と表現したことから、それがそのままこの地域のモットーになりました。

 


Molise|モリーゼ州

 西にアブルッツォ、北にアドレア海、東にパグリア、南にカンパーニャと接しています。1970年にアブルッツォと分離し、ダオスタに続いて二番目に小さな州となりました。中小規模の農業と食品加工が主産業で、国全体に販路を持つような大企業はほぼ存在しません。1950年代から大幅に人口が減少した過疎地域でもあります。

 


 西側に広大なティレニア海に面した海岸線を持ち、北西にラツィオ、北にモリーゼ、北東にパグリア、東にバジリカータと接しています。首都ナポリを中心に、同州は六百万人近くという国内三位の人口を擁し、南イタリアで最も生産性の高い地域としても知られています。文化的にも肥沃で、食、音楽、建築などのほか、ポンペイやヘルクラネウム等の考古学的な遺跡も多く、観光地としての人気も高い。

 


Apulia/Puglia|パグリア州

 北から西、南側まで州境の半分以上をアドレア海、イオニア海に囲まれ、西にはモリーゼ、カンパーニャ、バジリカータと面しています。ブーツのかかととハイヒール部分に当たります。州都はバーリ。イタリアで最も暑く乾燥した地域で、夏場は40℃を超えることも。風向きによって天候が変わりやすく、北のアドリア海からのボーラ風で温度と湿度が下がることもあれば、北アフリカからサハラ砂漠の赤埃を乗せてやってくるシロッコ風で急上昇することも。漁業の盛んなタラントは、ムール貝の養殖で世界一の港として有名です。

 


Basilicata|バジリカータ州

 東にイオニア海、西にティラニア海に面した部分を持ち、北にパグリア、西にカンパーニャ、南にカラブリアと接するバジリカータは、ブーツの土踏まずの部分に当たります。州都はポテンツァ。アルピーヌ山脈の南端部分が含まれ、南イタリアで最も山岳部分が多く、山間部比率は47%、丘陵部比率が45%にも上り、平野部は8%しかありません。地震や火山、地滑りの多い地域でもあります。他の地中海エリア同様、かつては豊かな森林地帯でしたが、ローマ帝国時代に切り倒され、荒れ地となってしまいました。

 


Calabria|カラブリア州

 東南にイオニア海、西にティラニア海に広く面し、北にバジリカータと接しているカラブリアは、ブーツのつま先の部分に当たり、目と鼻の先にはシチリアがあります。州都はカタンザーロですが、人口数ではレッジョ・ディ・カラブリアが最大で、カラブリアは紀元前8世紀の古代ギリシャ人によって「イタリア」という名称が初めて名づけられた地であり、西洋哲学の父であるピタゴラスが活動し、古代オリンピックのチャンピオン・ミロが誕生した地でもあります。

 


 イタリアの最南部にある地中海最大の島で、メッシーナ海峡を挟んでカラブリアと向き合っています。イタリア五自治州のひとつで、五百万人が住んでいます。ヨーロッパで最も高い活火山、エトナ山(3,357m)の景観で知られます。紀元前12,000年頃から人間が暮らしていた痕跡が確認されています。カトリック信徒がほとんどで、いまだに毎週教会に通う島民が大多数を占めています。州都はパレルモ。

 


 シチリアに次いで、地中海二番目の大きさの島で、五つある自治州のひとつです。公用語はイタリア語とサルデーニャ語で、州都はカリャリ。山々や森、平野、人の住まない原野、ゴツゴツとした岩肌の湾岸や砂浜などといった生態系の多様さから、「ミクロな大陸」と呼ばれてきました。